「小説配信」ZeTMan-ゼブンジャー序章2「おかしの家の中はおかしい。なんつって」
1を見てない方はこちらから。
「ここはどこかじゃとー?知りたいか?」
「アメリカじゃないのか。ここは」
「アメリカじゃ」
「アメリカには、おかしの家があるんだな」
「そうじゃ。そしてここは、オルバハウス1号2号じゃ」
「あつしとりょうが住んでいると?」
「それは、ロンドンハーツやないか~~~い」
「はい、そうですね」
「そして、今日からここがお前の家じゃ」
「、、、は?」
「嫌じゃろ。嫌じゃろ。しょうがないヤツめ。コノヤロー、コノヤロー」
「、、、」
「オルバ様は優しいので、ゲームに勝ったら帰してあげよう」
「お母さん。どうやらぼくは今日死ぬようです」
「って話聞いてる~~~~」
「いや、ふとつっこみがいなかったらどうなるかと思って」
「わしがお前のボケのはるか先へ行く~~~」
「ビブラートきかすなよ。文章にしたら分かりづらいんだよ。で、なんで勝負しないといけねんだよ」
「うるさいわ。このたわけ」
「たわけって言葉リアルに使ってるヤツ初めてみたわ」
「よしこうしよう。もし勝負に勝ったら、レイカちゃんのおっぱいをもんでいい」
「よし、いいだろう」
レイカちゃんがブサイクだったら訴えてやるから大丈夫だ。
おかしの家の中はおかしい。なんつって。
という寒いギャグを思い浮かべたところで、「おかしの家の中は、おかしい。なんつって」とオルバに言われた。実際に言っているやつを見るとちょっと殺意わくのなんでだ。
同時にぼくは、こいつと同じ精神年齢だということに気が付き、そんな自分をはたきたくなった。ダウンタウンの浜田じゃないからやらないが。というかあの人も自分にはやらないんだ。
そんなくだらないことを思いながら玄関でスリッパに履き替えた瞬間、うるわしすぎる聖女が長い廊下からやってきた。
「お、お、おねえさん?」
我ながらキモイな。だがしかし、このおねえさんがきれいすぎるからしかたがない。
「こんにちは。オルバ様、こちらは?」
お姉さんが怪訝そうな表情で、オルバを見る。そのとき見せたきりっとした目つきもいい。
「ああ。今日からここで暮らすことになった絶斗くんじゃ」
「なんでだよ」とツッコミながら、内心はちょっとありかなとは思う。こんなキレイな人と暮らせるのなら。
そしてすぐにあることに気づく。「名前教えましたっけ?」
「当然じゃろう。わしはオルバなのじゃからな」
オルバだからという理屈は理解できないが、おかしの家の中にいる時点で常識は通用しない。そういうことだ。
ほんとに長い廊下を歩き、巨大できらびやかなシャンデリアのあるリビングに着いたときには、ちょっと息が荒れる。
「だらしがないぞ。少年」
「おんぶされてるお前が言うな!」
なぜかあの後、もう歩けないとオルバにおんぶを要求された。断ればいいのだが、根が善人なせいかけっきょく嫌々ながら引き受けてしまった。
「ふー。だれがあんな長い廊下にしたんじゃ」と文句を言いながら、やっと下りてくれた。
「こっちのセリフだよ」一応ツッコむが、声に力はない。
「それよりも、レイカちゃん。飯にしよう」
オルバがおしゃれなテーブルクロスのテーブルに座るとレイカさんに言いつけた。レイカさんはさきほどの麗しき聖女だった。このレイカさんのおっぱいをもむためには、なんとしても勝負に勝たないといけないな。
ぼくはテーブルに座りながら、レイカさんの体をなめまわすように見ていた。
そんなぼくに気が付いたのか、オルバがぼくを見ながら、ほくそ笑んでいた。
「いいじゃろ。いいじゃろ」
レイカさんがキッチンに向かったのを合図にオルバが言ってくる。
「なんのことでしょうかね」
「触りたいじゃろ。触りたいじゃろ」
「はい。触りたいです!」
ぼくは立ち上がった。
鬼のような形相でレイカさんがこちらを見ていた。
レイカさんは、鬼だったんだ。
それから、ぼくのことを見た者はいない。
というのは冗談だが、レイカさんに思いっきり殴られた。
その凄みは鬼さえ逃げるほどで、ぼくは初めて女の恐ろしさを知った。
そして、レイカさんのおっぱいを触る権利だが、どうやらなしの方向になりそうだ。レイカさんにそのことがばれてしまったからだ。
だがしかし、きっと頼み込めば大丈夫だ。その方向でいってみよう。
食卓には、これほどかというくらいに料理が並んでいる。そして、そのラインナップに驚く。日本三大珍味(このわた、からすみ、くちこ)に沖縄三大珍味(スクガラス、豆腐よう、ミミガー)、そして世界三大珍味(キャビア、フォアグラ、トリュフ)が一同に集結するなんて、いったいどうやって集めたんだ。
それだけではなく、日本三大そば(戸隠そば、出雲そば、わんこそば)に日本三大和牛(松坂牛、近江牛、神戸牛)、日本三大ラーメン(札幌ラーメン、喜多方ラーメン、博多ラーメン)、日本三大ネギ(下仁田ネギ、岩津ネギ、博多万能ネギ)、三大七味唐辛子(やげん堀、七味家、八幡屋磯五郎)、世界三大健康野菜(ヤーコン、菊芋、ほど芋)、中国三大珍味(ふかひれ、干しアワビ、ツバメの巣)、世界三大生ハム(プロシュート、ディパルマ・ハモン・セラーノ、金華火腿)、などが食卓に並んである。食べ物の国際会議か。
おまけに、ブイヤベースやボルシチ、トムヤムクン、ふかひれスープ、ミネストローネ、スンドゥブ・チゲ、クラムチャウダー、みそ汁などの世界のスープが盛りだくさんだ。ちなみに、世界三大スープは、選定者の意見の食い違いなどから、4つのパターンがある。
そのほか、カレーやピザ、からあげやカツ丼などヘビーな料理が並んでいる。
今からここで、壮大なパーティーでもやるのかとオルバに訊いてみた。
「まっさかー。これが勝負だよ」
「は?」
「こ、れ、が、し、ょ、う、ぶ」
「そんなに細かく切らなくたって分かるわ。勝負ってなんのことかって訊いてるんだよ」
「だから」
オルバはレイカさんがキッチンの方にいるのを確認すると、ぼくの耳元でごにょごにょと話した。
「レイカさんのおっぱいをさわりたくないかい」
「それはもう。さわりたいです」
「じゃろじゃろ。食卓にある食べ物を24時間以内に食べおわったら、触らせてあげる」
「でも触らせてくれますかね」
「心配するでない。わしがなんとかしよう。わしには、不思議な力があることは分かるじゃろ」
「その言葉、信じるしかあるまい」
「タイムリミットは明日の14時。異論はあるまい。その代わり、もしできなかったら、どうなると思う?」
「できなかったら?」
「それは、そんときに分かる」
なんか騙されたのではないかと思ったが、おっぱいをさわりたいという思いは、きっと奇跡を起こせると信じることにする。