ZeTMAN-ゼブンジャー1章-4 「わたしをころして」
「キサマ、なんや!どけや!」
大漢がドスの効いた声でイケメンくそやろうに詰め寄る。
「キサマ、誰に口きいてんだ、ああん!?」
大漢の気迫に押されるどころか自らつめよるイケメンクソやろう。
「俺はテメェに用はねぇ。さっさと消えろや。粉々にぶっつぶすぞ!」
「テメェこそ、粉々に切り刻んでやる!」イケメンくそやろうは背中に背負っていた鞘から大剣を取り出す。
「さて、ミンチにしてやるか」
「ミンチになるのは、貴様だ。ガキが死にてぇか?」
「デカイのは体だけじゃなくて、態度もか?」
「態度がデカイのはテメェの方じゃい!」
大漢が拳を振り上げる。その瞬間、車内が大きく揺れる。なんて威力なんだ。ぼくはこんなヤツを相手にしていたのか。
その拳がイケメンくそヤロウに直撃。した刹那。
拳は空ぶる。確かに当たっていた。そう認識した瞬間には、イケメンくそヤロウの姿はない。
どこだ?
大漢も行方を探しているみたいだ。
「後だよ」
人を見下したような冷たい声。
大漢が後ろを振り向き、再び拳を振り上げた。
、、、。振り上げようとしていた。拳がイケメンくそヤロウの額に直撃する一歩手前で静止している。
「貴様、何をした!?なぜ、身体が動かない!?」
「ミンチにするんじゃなかったのか?俺の額はここにあるんだけどなぁ」
「黙れ!貴様!殺す!!!」
「まだ分からねぇの。お前は氷漬けなんだよ。
もうすでにな」
「なに、馬鹿なことをっ」
大漢はぴくりとも動かなくなった。
そして、イケメンくそヤロウは、大剣を背中の鞘にしまう。
その刹那、大漢を氷が覆う。そして数秒後には、粉々に砕けた。
「俺と出会ってしまったのが、貴様の敗因だ」
むかつくが、かっこいいっていうのは、こういうことなんだろう。ぼくには、分からないが。
その様子をまじまじと見つめていたふわりだが、
拓人がバスの出口付近にさしかかったところで、
ふわりが声をあげた。
「なんで、わたしを助けたの?」その声は震えていた。怒りと戸惑いを帯びた声だ。
「人を助けるのが、俺の仕事だ。なんか文句でもあるのか?」拓人の声は冷たい。
「、、、」
「何もないなら、さらばだ」
「なん、、で、、。わたしを、、、。わたしを助けたの!」
「なんだ?殺してほしいのか?」
「お兄ちゃんがいないならっ!、、、。生きる意味なんてない!殺してよ!あいつみたいに!わたしをっ。わたしを殺してよ!」
何を言ってんだ、ふわり。ぼくならここにいるぞ。
ふわりを優しく抱きしめた。すり抜ける身体。
「うっせぇな、このガキが」
車内に舌打ちが響く。
まずい。
ぼくはふわりの目の前に立ち、必死に叫ぶ。
やめろーーー。
拓人は鞘から大剣を取り出す。
「お前に死ぬ覚悟があんのか?」
「うん。早く殺してよ!早く、早く、早く、早く
、早く」
ふわり、やめろ!おいこのクソ野郎!ふわりになんかしてみろ!ただじゃおかねぇぞ!
無我夢中にぼくは拓人に殴りかかっていた。すり抜ける身体。その刹那、拓人が大剣を思いっきり振り上げた。