ZeTMAN-ゼブンジャー1章-5 「いのちの代償」
振り上げた大剣に向かって、ぼくは飛びついた。その大剣がぼくを切り裂くと同時に身体からすり抜けていく。
ぼくはどうなってもいい。こいつだけは。こいつだけはぼくが助ける!
ぼくの願いは虚しく、その大剣はぼくから離れ、ふわりに向かっていく。スローモーションになって視える視界に言い聞かせる。
動け!動け!ぼくの身体。
凍りついてしまったように身体が動かない。
大剣がふわりに直撃。
する一歩手前で止まる。
よかった。よかったぁ。
安堵の声が漏れる。
「、、、」
ただ震えるだけしかできないふわり。
それを見つめるふたつの視線。
冷たい表情の男が言う。
「二度と死にたいって言うんじゃねぇぞ。いいか?
二度とな!死ぬ勇気もねぇんだろうが?」
あたたかくふわりを見つめていた眼差しがその瞬間に鬼のような形相になり、そいつを睨み返した。睨み返すことしか出来なかった。殴る気力さえ残っていなかった。ふわりを抱きしめてやることも。
「貴様はとりあえず助かったんだ。そこで大人しく待っていろ。あの方が来るまでな」
あの方とは?
ぼくがそう思っていたところに、あの方がやってきた。
「たーくちゃん!元気かーい」
あきれる程飄々としたその声に馴染みがあった。
間違いない。
その声の持ち主はオルバだった。
「見れば分かりますよね。オルバさん」
「もう釣れないわねー。拓ちゃんったら」
「それよりも。どうしますか?」
「彼女と絶斗くんについてか。うむ。それは彼女が選ぶことだよ」
彼女が選ぶこと?何を選ぶんだろう。
「ねー、お嬢ちゃん。どうだい、今話しはできるかい?」
オルバはふわりに話しかける。
「何なの?おじさん誰?」
「誰かは関係ないのじゃがな。強いていうなら、そこの彼を救うことができる存在じゃ」
オルバは倒れているぼくの死体を指した。
「医者なのね。ねぇ、おじさん!お兄ちゃんを助けて!なんでもするから!」
「本当になんでもする覚悟があるのじゃな」
「うん」
「神に誓って断言できるか?」
「、、、はい」
「そこの彼は、、、。絶斗くんは今死んでしまっている。正確には、あの世に魂が昇ってしまう前、成仏する前の状態じゃがの。まだこの状態なら、蘇生させることが可能じゃ。しかし、、、このわしの能力でさえ蘇生というのはなかなかに難しい。絶斗くんを蘇生させるためには、同じぐらいの何かを代償に払わないといけない。同等の価値があるものをじゃ。つまり、、、」
「つまりなんですか?どうしたら、、、兄ちゃんは!」
「つまり、嬢ちゃんのいのちが必要になる」
「、、、、いのち」
いのちだと、、、?何を言ってやがる。
「嬢ちゃんが命を差し出せば、彼は助かるよ」
「兄ちゃんが助かるなら、わたしはどんなことだってします!」
何を言ってやがるんだ、ふわり!