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「Ze TMAN-ゼブンジャー 序章13〜「近づく足音」

観覧車から降りるとちょうど閉園間近のアナウンスが流れ、ぼくらは出口へ急ぐ。こんな忙しないデートは、たいがい片方の体力を奪うだけなんだということをこいつに教えないといけないな。

出口のゲートを通り、スタッフに感謝の言葉をかけるふわりの無邪気さを見つめながら、「こいつには敵わないな」と感心しながら、ぼくもふわりにならって感謝の言葉をのべる。

笑顔で「またね」と言い手を振るスタッフさんに手を振りながら、ぼくらは遊園地を後にした。

「楽しかったね」

「まあ、悪くはねぇかな」

まんざらでもなさそうなぼくの顔を覗き込むように上目遣いをしてくるふわりに「生意気だ」と蹴りを入れる。

「なにするの、変態」

「うっせぇ、早く帰るぞ」

と言いつつバスが来ないと帰れないのだがと思った。

「ねぇ、お兄ちゃん」

「なんだふわり?」

「うん。なんでもない」

「なんだよ、それ。言えよ、バカ」

「バカとかそんなこと言うなら言わない」

「こどもかよ」

「、、、どう、、だった?」

「ああん。ま、楽しかったな」

「なら、よかった、、、」

「デートと考えたら、0点だ」という言葉は飲み込むことにする。第一、ぼくらの関係にドキドキやときめきなんて存在しないのさ。楽しかったからそれは、100点なのだ。

「なあ、ふわり。お前はいつまでもそのままでいてくれ」

「変なお兄ちゃん」

「いつも変なお前に言われたくない」

いつも通りにぼくらはじゃれあっていた。ぽこぽことぼくの腹を軽く殴るふわりの頭をはたくとバスがちょうど到着した。

「なによ、お兄ちゃん」

ふわりがフグみたいな顔をしているが、ぼくはそれを無視してバスに乗り込む。

「待ってよ、お兄ちゃん」

「時間は待ってくれねぇぞ」

バスのICカードをかざすと、後ろ側の2人用の席に腰掛ける。閉園間近まで遊園地を満喫するやつはあまりいないので、空席が多かった。

ぼくは1日の疲れを感じ、居眠りを始めようとするのだが、横にいる疲れ知らずのバカ女がそれを阻止してくる。

「サンマさんとはれるバイタリティは、今だけはなくしてくれないかな」

「うん、なにが?」

「なにがじゃなくて、眠たいんだよ」

「家に帰るまでがデートですよーだ」

「遠足みたいに言うな」

「遠足みたいに言ってないし」

「言ってんだろうが」

「言ってません」

「じゃ、もうそれでいいよ」

ぼくらがじゃれついている間に、ぼくらの目の前に悪意の塊みたいな人間が立っていることに気がつかなかった。