ZeTMAN-ゼブンジャー 序章ナイン 「遊園地 パニック ときめきは何処に」
今日はふわりと遊園地へ行くことになっている。
男女で遊園地へ行くということは普通ならば、「付き合っている」ということなのであるのだが、ふわりにそれを言うと、「私たちは付き合っている」と言ってのけた。
「ぼくが知らないうちにそんなことがあったんだな。って、ぼくは夢遊病か!?」
「夢遊病ってなんだそりゃ?」
「はぁ。とにかく、ぼくは行かないぞ」
ぼくの抵抗はむなしくふわりの反論に玉砕することになるのだが、こいつの両親に言いたい。
「もっとちゃんと教育しろや!化粧に時間かけすぎたあげく上手くできんわ、こっちの言い分を聞かず勝手に話を進めるわ、なんなんだよ、一体!」
ぼくはどうやらバス停の前で叫んでいたらしい。
通行人がぼくを見て「なに、あの人?」みたいな表情を向けてくる。
「急にどうしたの、お兄ちゃん」
「お前のせいだよ、バカ。化粧はしなくていいんだよ、まだ」
「なんで?ああ、そのままでもかわいいってことね。うふふ」
「そうだよ」
もうめんどくさいので、そういうことにしてやる。
「やっぱりそういうことだったのね」
嬉しそうにそう語るふわりを無視していたら、すぐにバスが到着した。ぼくらは、バスの後部座席に座り、雑談を続ける。ふわりのかわいさアピールをずっと無視していると、遊園地についた。
ふたりだけの遊園地か。そういえば初めてだったな。その相手がお前じゃなくて、レイカさんがよかったと言ってやりたい気分だが、その相手がふわりなのが不満っていうことではない。不満なのは、ぼくの心情なのだ。
「お兄ちゃん、なにぼうっとしてるの?」
「いや、お前とふたりだけで来るの初めてだからさ」
「あれ、そうだっけ?ま、いいでしょ、そんなこと。入りましょう」
「お前、なに気合い入ってんだよ。そういうときは、後ろから付いてくんだよ。男をリードしようとすんな。ほら、手を引っ張ったりしないんだよ、いい女ってのは」
「お兄ちゃんにとっては、私がいい女だからいいの」
「どういう理論だよ」
ふわりはぼくの手を引っ張って、さっさとチケットを買い入り口のゲートに入る。なぜ、きみはぼくの手を離したんだ?なぜ、ぼくは離してしまったんだ。いつまでも、繋がっていると思っていたんだ。