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「ZeTMAN-ゼブンジャー序章12 「ぼくは笑った」

虹色の街並みはやがて灰色の街並みに変わっていた。

「ねぇ、➖くんは➖くんのこと嫌い?」

「うん、なんでだ?」

「なんとなく、そんな気がして」

「嫌いじゃないけど。嫌いだな」

だって、お前が見ていた景色にアイツはいなかったんだぜ。

「アイツ、ああ見えていいヤツなんだよ。だから仲良くしてあげてよ」

「仲良くなんかできるかよ。ぼくは、ぼくはアイツと仲良くはできない」

「おねがい」

「分かったよ。お前がそういうならな」

ぼくの舌打ちはきみにはどう聞こえるのだろう。

観覧車の中で見える景色がふと虹色に切り替わる。

 

「お兄ちゃん、こういうときは黙らないの」

「こういうときは黙るんだよ。ムードが分かんねーヤツだなぁ」

「そういう大人なムード期待してたんだ?」

「こ、ろ、す、ぞ」

「こわーい」

「こわいって思ってんなら、ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ」

「お兄ちゃんは優しいから怖くなんかなれないもん」

「いいか、優しいヤツが本気で怒ったら、怖いんだぞ」

「お兄ちゃんは例外〜」

「IKKOさんか!その言い方腹立つわ!原辰徳か!?」

「うん?」

「巨人の監督だ」

「巨人の監督?体大きんだね」

「その巨人じゃねんだよ。勉強しろよ。」

「じゃ、今度数学教えてよ」

「ぼくがお前に教えれるのは、国語ぐらいのもんだ。ってなんで、ぼくが勉強見てあげなきゃいけねんだ。1万円な」

「うん、ありがとう。1万円くれるんだ」

「なんで1万あげて、こっちが勉強見てあげなきゃいけねんだよ」

「お兄ちゃんが言ったんじゃん」

「もういい、ちょい黙っていてくれ」

黙っていれば、ちょっとはかわいく見えるかと

じーっとふわりを見つめるが、色気なんかは感じることなく、普段と同じ変わらないふわりだった。

「なに見てるの、お兄ちゃん」

「照れてるからってかわいく見えるわけではないんだぞ。ふわり」

「お兄ちゃんからしたら、いつでもかわいんだもんね」

ぼくは思わず、ふわりの足を踏んでやった。

「キーっなにするの、お兄ちゃん」

「かわいい女の子は、キーっとかわめかねんだよ」

「それでもかわいく見えるのが不思議なんだよ」

「だれ目線なんだよ。それは」

「だれ目線?さあ」

「お前と話してると疲れるわ」

「きゃー、褒めてもなにも出ないわよ」

「褒めてねぇわ」

そんな会話をしていたら、気がついたら観覧車は地上へと降りていた。

男女で観覧車に乗ってKissぐらいするのが一般的にデートと呼ぶのだろうが、ぼくらの関係ではそうはならなかった。そんなロマンチックだとかドラマチックだとかってヒビキはぼくらの関係にはない。

"いつもそばにいる親近感"こそがぼくらを表現するに最適な言葉。

そしてそれを大事に背負い込んでしまったぼくとそれを忘れてしまう彼女との間の隔たりは、一生を賭けても埋まらないのかもしれない。それでもぼくは、足掻いている。

 

ぼくは、笑った。