Ze TMAN-ゼブンジャー序章3 「おっぱいは奇跡を起こす?!」
ぼくは1時間ぐらいもくもくと食べた。
できるだけ咀嚼はせずに食べようとするのだが、
どれもこれも美味しすぎて、ついつい味わってしまう。どこで調達したのか、高級食材ばかりが食卓に並んでいる。松坂牛や神戸牛などを使ったカレーや牛丼。新鮮なウニやイクラで黄金のかがやきを放つ海鮮丼など、どれもこれもぜいたくを極めている。もしかしたら、中世ヨーロッパのルイなんとかよりも豪華な食べ物を食べているかもしれない。
だが幸福なのは最初だけで、1時間を超えたあたりから苦痛を感じる。長期戦が予想されるため焦りは禁物だ。食べ終わった皿の数よりも圧倒的に多い食べ終えてない皿を見ると、もうちょっとだけ頑張りたくなるが、無理はできない。
大事なのはいかに消化を早めるかと、食べるときにどれだけ満腹中枢を刺激しないかにかかっている。
ぼくは、箸を止めてスマホで検索してみる。
大食いの極意や満腹中枢を抑える方法などを検索してみた。だがしかし、役に立ちそうなものはない。
ぼくはオルバに進言してみる。
「あのー、なんとかならないですかね?」
「なんか青いイルカですかね?」
「ふざけないでください。ぶん殴りますよ」
「ふざけてないのでありまーす」
「ペガサスか?ミーのターンでーすじゃねんだよ」
「マインドスキャン」
「あなたに訊いたぼくが悪かったですよ」
どうする?諦めるか。
いや、おっぱいを諦めるなんてぼくにはできない。
それともレイカさんに直接直訴するかだな。
「おっぱいを触らせてください」
殴られるからやめとこう。いや、今度は殺されるな。
「あの、絶斗くんいいですか?」
そんな妄想をしているとき、麗しのおっぱいがぼくを見ていた。
「おっ、、」
パイという言葉はどうにか言わなかった。
「お?」
「お、、お綺麗ですね」
ふー。ごまかせた。
「ありがとうございます」
言われなれてるんだろうな。冷静に対処するレイカさんを見ながらそう思った。
「絶斗くん、ちょっと料理下げていいかしら」
「は、は、はい、どうぞ、どうぞ、どうぞ」
ぼくは席を外すと気まずそうに部屋を出た。
部屋を出たはいいが、どこか行く場所もないのである。適当に歩いて道を迷ってしまったら、きっと戻ってくるのに時間がかかるだろう。
だが、戻る気にもなれない。
こういうときは、進めである。
そしてたいがい後悔する。
ぼくは道を迷う。方向音痴のぼくだ。どこから出たのかさえも覚えてない。目印になるものをたどるのがこういうときのベターであるが、ぼくはそれをしてなかった。
ええいと自分の本能のまま進む。来た道もどるの大嫌い。来た道を覚えてないのだが、とりあえず進もう。死にはしないさ。
それから1時間以上は歩いただろうか。足がぱんぱんだ。しかも、まだ食べ物を消化できてないから吐きそうである。ぼくはとりあえず、適当に電気のついてない部屋に入る。だれもいない。ワンチャン、レイカさんの下着姿が見れるかもと思ったが、だれもいなかった。その部屋はどうやら、寝室らしく二段式のベッドが置いてあった。ぼくは、ちょっと厚かましいと思ったが、とりあえず寝転がることにした。
そしてどうやらそのまま寝てしまっていたらしい。
「わ、わ、わ、わ、レイカさん、なんでここに?」
「なんでかしらね」
目が覚めるとそこに、あの麗しのおっぱいがぼくを見ていた。
「そ、そんな、そんなだめですよレイカさん」
「なんで?」
「なんでって、わぁ」
レイカさんがぼくを抱き寄せる。ぼくの顔がおっぱいに当たる。いいにおいがする。
「触っていいよ」
おぉぉぉ。
ぼくのヤル気スイッチは間違いなく押されていた。
ぼくは、わけわからない奇声を発しながらおっぱいに食らいついた。
「うふふ。かわいい赤ちゃん」
ぼくはママの顔を見る。優しくていやらしい顔が一転、レイカさんの顔が急変する。
「ご、ご、ご、、ゴリラ!?」
うっほ。うっほ。うっほ。うっほ。
レイカさんだったはずのゴリラがドラミングを始める。
うっほ。うっほ。うっほ。うっほ。
ぼくはそのリズムに合わせてドラミングを始める。
お、おい?なにやってんだ?
てか、レイカさんどこ?
うっほ。うっほ。うっほ。うっほ。
ドラミングをやめたいはずなのに、やめれない。って、やめられない止まれないかっぱえびせんか?
ぼくは、意識を自分の顔に向けて見る。
ぼ、ぼ、ぼくはゴリラだったんだ。
うっほ。うっほ。うっほ。
うっほ。うっほ。うっほ。